硬水地域でのスキンケア-肌荒れの原因とその対策①-
こんにちは。dei.neiです。
前回、硬水・乾燥地域でのスキンケアにおすすめの保湿剤をご紹介しました。
前回の記事では私の肌がバグっているため実体験による言及はできないということがあり、硬水による肌荒れの原因や洗浄成分に関する部分は削除しました。
色々勘違いした結果石鹸系洗顔料(硬水地域で避けるべき洗浄成分NO.1)を普通にずっと使っていたんですが全く肌トラブルがないんですよ。なんならむしろツルッツルのペッカペカになったくらいなんですよ。
ですが、個人的にずっと原因を調べておりまして、それをやっと整理し納得がいく形でまとめられたので、客観的な資料を引用しながら今回・次回の二回に分けてご紹介したいと思います。
※注)私の実体験が示すようにスキンケアでは理論に当てはまらない個人的な合う・合わないもございます。あらかじめご了承くださいませ。
<硬水・軟水の違い>
そもそも、硬水・軟水とは何なのでしょうか。その違いについて先に整理しておきます。
硬水と軟水の違いを簡単に言うと「硬度」の違いなのですが、その硬度とはカルシウムとマグネシウムの含有量を指します。
アルカリ土類金属であるカルシウムとマグネシウムの塩類を多く含む水を硬水、少ない水を軟水といい、その度合はカルシウム塩、マグネシウム塩の含量で表されます。*1
日本では軟水・硬水の境を一般的に硬度100mg/Lで分けることが多いのですが、WHOの規定は以下のようになっています。
軟水 |
中硬水(中程度の軟水) |
硬水 |
非常な硬水 |
0~60mg/L |
60以上~120mg/L |
120以上~180mg/L |
180mg/L以上 |
日本の水は沖縄など一部地域を除き軟水~中硬水に分類されるものが殆どですが、ヨーロッパや北米などは硬水~非常な硬水に分類されることが多いです。
<硬水による肌荒れの原因>
では何故この硬水で肌荒れが起きるのでしょうか?
①せっけんと硬水中のミネラルの反応により生成される石鹸カス
大きな原因のひとつは硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムとシャンプーや洗顔料に含まれる洗浄成分とが反応して作られる「石鹸カス」だと言われています。
軟水では泡立ちの良い石けんも、硬水ではカルシウムやマグネシウムと反応して「石けんカス」に変化し、洗浄力も低下します。洗い流されずに残った石けんカスは肌荒れの原因になることもあり、それを取り除こうとゴシゴシ洗い過ぎると、皮膚のバリアを傷つけるので「乾燥肌」の誘因を引き起こすこともあります。*3
硬水中のカルシウムやマグネシウムがクレンジングや洗顔に含まれる洗浄成分に反応し、石鹸カス(金属石鹸)が発生します。
2RCOONa + Ca2+→(RCOO)2Ca + 2Na+
2RCOONa + Mg2+→(RCOO)2Ca + 2Na+
※(RCOO)2Ca / (RCOO)2Caが石鹸カス、2RCOONaが高級脂肪酸ナトリウム塩、つまりせっけんです。
この金属石鹸は"石鹸"といっても洗浄力はなく、肌に残る汚れとなり肌荒れを引き起こすといった仕組みです。
そのため、硬水地域ではせっけんを主成分とした洗顔料はほぼ見受けられません(稀に見ることもありますが)。しかし、日本で販売されている洗顔料にはこのせっけん(飽和脂肪酸)を使った商品が多くあります。そこで、硬水地域への移住や旅行をした際に日本から持ってきた洗顔料を使うことによって石鹸カスが発生し、肌荒れに繋がるということが考えられます。
②石灰が肌に付着することによる肌荒れ
また、二つ目の大きな原因として生石灰とも呼ばれる硬水中のカルシウム(酸化カルシウム:CaO)の肌への付着があると指摘されています。*4*5
軟水にも酸化カルシウムは含まれていますが、軟水と比べて硬水はこの含有量が多いために肌への影響が出てくると言うわけです。しかし肌への影響は個人差があるため硬水地域に移住した方の中には稀に、全く気にならないという方もいるようです。
<硬水による肌トラブルの対策>
では、これらの原因によって引き起こされる肌トラブルにどう対策を打っていけば良いのでしょうか。今回は以下の4点をご紹介します。
- 硬水をろ過し軟水化するシャワーヘッドやろ過フィルター、浄水器を使用する
- 石鹸カスの生成原因となる洗浄成分を避ける
- 洗顔後に軟水ミストを使用する
- 硬水で洗顔することを避け、拭き取りクレンジングを使用する
※ 繰り返しになりますがスキンケアによる肌への影響には個人差がございますので、あくまで参考程度にとどめていただき、ご自身に最も合った方法をお探しいただければと思います。
①硬水をろ過するシャワーヘッド・ろ過フィルター・浄水器等を使用
まず一番はじめに出てくる対策としてはやはり根本の改善、家の硬水を軟水化する、といったものになります。
硬水を軟水化するためのシャワーヘッドやシャワーヘッドとの間に取り付けるろ過フィルター、また水道の蛇口に取り付ける浄水器等が販売されています。 シャワーヘッドはお値段が張るものも多いですが、間に取り付けるろ過フィルターは比較的お手頃なお値段で入手することができます。以下はそれらの一部例になります。
以下の製品は日本で買えるものですが、硬水地域ではこのような商品が販売されていることが多いです。実際に私も近所のホームセンターでシャワーヘッドを見かけます(購入を悩んでいるうちに滞在期間の折り返し地点まで来てしまいました)。
バス用品・水回り品の取り扱いがあるホームセンターでは基本取り扱っていると思いますので、もしシャワーヘッドの交換等がしたい場合は一度問い合わせてみることをおすすめします。
②石鹸カスの生成原因となる洗浄成分を避けたクレンジング・洗顔料を使用
前述したように、石鹸カス(金属石鹸)はせっけんとマグネシウム・カルシウムが反応することにより発生します。 この石鹸カスの発生を避けるためには、シャワーヘッドの取り替えや浄水器の取り付けを行わない限りは脂肪酸ナトリウムが主な洗浄成分となっている洗顔料を避けるべきだと考えられます。
日本から洗顔料を持ってきた場合、せっけんを主な成分とする洗顔料(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などを含むもの)である場合が多いため、肌荒れを感じる場合は一旦使用を控えてみてください。
※飽和脂肪酸の中でも、ラウリン酸やオレイン酸は耐硬水性が高いと言われています。
また、現地で洗顔料を調達する場合も成分に関して注意が必要です。硬水地域ではせっけんを主な成分とする洗顔料は稀にしか販売されていませんが、その代わりに耐硬水性の高い石油系界面活性等が主に使われている商品が多く販売されています。代表的な成分にはラウレス硫酸ナトリウム・ラウリル硫酸ナトリウムなどがありますが、それらは石鹸カスこそ発生させないとはいえ、洗浄成分が強力なため乾燥肌を引き起こす原因となります。特に気候が乾燥する地域ではこれらを主な洗浄成分とする洗顔料を使用することでより乾燥肌へと肌状態が悪化していく可能性があります。
では、どのようなクレンジング・洗顔料を選べば良いのでしょうか。条件としては①せっけんを主な洗浄成分としない、②ラウリル硫酸Naなど耐硬水性は高いが皮膚に刺激の強い成分を主な洗浄成分としないを満たすことになります。
そこで、主な洗浄成分として植物オイル・アミノ酸系洗浄成分などを使用するクレンジング・洗顔料を選んでいく形になります。これらは日本では比較的容易に探すことができるのですが、硬水地域ではそもそも水を使った洗顔を避け、主流は拭き取りクレンジングなので日本
よりも見つけることが難しくなります。そんな中、私がヨーロッパで見つけたもの・また日本で買えるものの一部例を以下に載せておきます。
(※良い商品を見つけ次第随時追加いたします)
ヨーロッパで買えるおすすめクレンジング:
CAUDALIE Make-Up Removing Cleansing Oil
主な洗浄成分:サンフラワーシードオイル、ポリグリセリンオレイン酸等
植物油を主な洗浄成分とするクレンジングオイルではこちらが非常におすすめです。
https://us.caudalie.com/make-up-removing-cleansing-oil.html
CAUDALIE GENTLE CLEANSING MILK
主な洗浄成分:イソノナン酸セテアリル
メイクが軽い方はこちらのジェントルミルククレンジングもおすすめです。
https://us.caudalie.com/face/products/cleansers/gentle-cleansing-milk.html
Avene GENTLE MILK CLEANSER
主な洗浄成分:ミネラルオイル
https://www.avene.co.uk/face/products-for-daily-use/face-essentials/gentle-milk-cleanser
日本で買っていけるおすすめクレンジング:
THREE バランシングクレンジングオイル
植物油を中心としたクレンジングオイルです。しっとりとした洗い上がりなので特に硬水+乾燥地域にはおすすめです。
主な洗浄成分:ブドウ種子油等
シュウウエムラ アルティム8∞スプリム ビューティークレンジングオイル
日本でも大変人気の商品です。植物油+エステルを主な洗浄成分としています。
THREEと比べると脱脂性は強まりますが、がっつりメイクをしっかり落としたい際にはおすすめかと思います。
主な洗浄成分:トウモロコシ胚芽油、パルミチン酸エチルヘキシル等
ヨーロッパで買えるおすすめ洗顔料:
Avene CLEANSING FOAM
非常に優しい洗浄成分の泡出てくるフェイスウォッシュです。私も実際使っていましたが、洗浄力はかなり優しめなので物足りないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
主な洗浄成分:ココアンホ酢酸、ココイルグルタミン酸2Na
https://www.avene.co.uk/cleansing-foam
CAUDALIE INSTANT FOAMING CLEANSER
こちらもAveneのフォームクレンジングと同じく洗浄力はかなり優しめになります。お化粧をした際はクレンジングでメイクをしっかり落とすことが必要になります。
主な洗浄成分:ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、(カプリリル/カプリル)グルコシド、コカミドプロピルベタイン等
https://us.caudalie.com/face/products/cleansers/instant-foaming-cleanser.html
BIOショップで買える植物油脂の石鹸
「石鹸」と名前がついていると一瞬身構えてしまいますが、石鹸素地ではなく植物油で構成されているものなら大丈夫です。
ヨーロッパではBIOショップで簡単に探すことができるようです。
また見つけし次第別記事でご紹介したいと思います。
日本で買っていけるおすすめ洗顔料:
F organics モイスチャーフォーミングウォッシュ
F organics(エッフェオーガニック) モイスチャーフォーミングウォッシュ 150mL
- 出版社/メーカー: マッシュビューティーラボ
- メディア: ヘルスケア&ケア用品
- この商品を含むブログを見る
ラウリン酸、アミノ酸系洗浄剤をベースとした泡で出てくる洗顔フォームです。
主な洗浄成分:ラウリン酸ポリグリセリル‐10、ココイルグルタミン酸2Na
アレッポの石鹸
シリアで作られている商品になります。(ヨーロッパ・日本どちらに入れるか迷いましたが日本でも購入することが可能なため日本に入れておきました)
主な洗浄成分:オリーブオイル、ローレルオイル
MINON フェイシャルウォッシュ
ラウリン酸・ステアリン酸も使用していますが配合比率が低いので他の洗顔料と比べると問題がない方だと思われます。
主な洗浄成分:ミリストイルグルタミン酸K
以上がおすすめのクレンジング・洗顔料になります。
洗顔料に関しては特に程よいものを見つけるのが難しく、より良いものを見つけし次第随時更新いたします。
次回に続きます
少し長くなって来てしまいましたので対策③洗顔後に軟水ミストを使用する、からの続きを次回の記事に分けてご紹介したいと思います。
ご意見・ご指摘等ございましたらコメント欄・twitter(@monon73)までよろしくお願い致します。
dei.nei
*1:「上水試験方法・解説編, 2001年版」, pp.210(日本水道協会,2001)
*2:WHO/HSE/WSH/10.01/10/Rev/1 Hardness in Drinking-water.
Background document for development of WHO Guidelines for Drinking-water Quality. pp.1(WHO, 2011)
http://www.who.int/water_sanitation_health/dwq/chemicals/hardness.pdf
*3:馬場恒春『ヨーロッパの硬水』http://www.eu-jp-doctors.org/resources/Eurowater.pdf 欧州日本人医師会
*4:CaO MSDS https://hazard.com//msds/mf/baker/baker/files/c0462.htm
*5:公益財団法人日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報【生石灰(酸化カルシウム)】ver. 1.00 http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/M70145.pdf